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振り返り書庫-恋するお仕事-

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ジロウのおばあさまのエックスデーが近いと言う事で、彼は実家に帰省をしているの。
「マットレスが届くから受け取って欲しい」
そんな依頼のせいで、アタシは昨日から三茶にいるのよ。何ひとつ片付いていないマンションで、汚したり傷つけたりしないように、コソコソと生活を送っていて、まるで、ちょっぴりキュートな泥棒だわね。

何時に届くのか分からないから、ふらりとネットカフェに来ているんだけどね…いいのよ!!ここ。
昨日は「読売新聞の夕刊って置いてませんか」って、聞き込み刑事みたいな真似だけをして去ったんだけど、今は、きちんと利用中なの。ドリンクバーがついているのは、当たり前なんだけど、お菓子まで置いてあるの。
お一人様1回まで、って書いてある下にチョコやら煎餅やらクッキーやら…。モッサリと積んであるのよ。分かりゃしないでしょ。何往復もして、お腹がいっぱいよ。

2006年9月15日  恋するお仕事

9月ってどこの会社も忙しいのかしら?毎日忙しいわ。
そんな時はテツヤ君に癒されるに限るわよね。

「ちょうど俺、休憩っすよ。ちょっと休んでいけばいいじゃないですか」アタシはすぐに帰るつもりだったけど滅多にない、こんなラッキーが巡ってきたのよ。「おう!」って頷いて外のテーブルに座ったわ。テツヤ君はいきなり仕事の話を始めたの。聞いてもないのに、可愛い坊やね。

アタシ、仕事において「現状維持」ってありえない言葉だと思って働いているの。やあね、アタシだって恋をしたりエロスを極めたりばかりじゃないのよ。真面目に働くOLよ。今は出社目的の半分以上がテツヤ君見学になっているけどね。

恋は報われないわ。だって、世の中にホモが少ないんですもの。多くても困るわよね。人口が減るもの。だから男が女を好きで、女が男を好きであることは賛成よ。ていうか、賛成も反対も、それが世の中の常識中の常識よね。
言葉を間違えたわ、ごめんなさい。

でもね、仕事は分野にもよるけど、大半は本気で努力さえすれば、それだけ報われるものだと思うの。否定する人もいるわ。でも、そういう人に限って、その程度を努力と言うのかしら?って感覚なのよね。とんだお笑い草だわ。

努力って、たやすいものじゃなくってよ。

限界まで努力したけれど結果が出ないって簡単に言う人もいるわ。きっと限界の壁が低いのよ。そんな低い壁、認めないね。壁じゃなくてハードルくらいの高さで立ち止まってんじゃないかしら。苦手な事は自ら志願しないと結果なんて出ないわ。子供の頃は跳べなかったハードルも大人になれば簡単に跳べるように(そしてまた跳べなくなるのが悲惨よね)。

「誰にも口出しされたくないくらい、血の滲むような努力をしたけど全然報われない」って言うなら、それは、よっぽど感性が鈍いか、不向きなのよ。上には上がいるわ。辞めなさい、あなたの仕事じゃないわ。

結果が全てだと思ったら大間違いよね。報われるっていうのは結果が出なくてもいいと思うの。血の滲む努力は必ず人を成長させるわ。必ずよ。人として成長したのなら、それは報われた証だと思うの。

それにね、常に向上心を意識して働いているわ。些細な作業でも、アタシはそれをする事で、また一つ技術的な事か内面的な事が進化した気がするわ。そもそも「自然と身につく」って言葉が嫌いなのよ。優秀な脳を持った、人間に生まれたのよ。何でも、意識して身につけたいの。

「俺は現状維持しか考えてない」って言い切ったテツヤ君には軽くショックを受けたの。
店長になる気もないし、今の仕事をずっと続ける気も、だからと言って辞める気も、この職場で何かを極める気も、工夫する気も、下をフォローする気も…。ラクして生きたいって。目の前が、ちょっと暗くなったわ。さっきまでテツヤ君が眩しくて直視できなかったのに、何だか大きな雨雲が関東中から集まってきたみたいね。

何も仕事に人生を捧げろ、なんて安いセリフは言わないわ。生活のサイクルの一部として捉えるのも素敵。優先順位で彼女や趣味が上でも当然、素敵。アタシと考え方が同じだの相違してるだの、そんな小さな事など気にしないわ。ただ、何かを考えたり大事に守ったりしながら生きる姿だからこそ、男ってカッコイイんじゃないかしら。それが遊びでも、テレビでも何でもいいから。

「いずれは彼女との結婚だって・・」ってアタシが言うと、結婚はしないって言うの。
だから彼女が俺に愛想を尽かして、いつか別れるんじゃないかな。親の面倒は見ようと思ってないし。子供はいらない。金だってないし。ただ全部、今のままの現状維持ができれば俺はそれでいい。

アンタって人は…少しだけ悲しくなったわ。そんなのテツヤ君の勝手だけど、アタシの好きになった人って、こういう考え方だったのね。雨が降ればいいのに…。傘なんて要らないわ。
どしゃ降りに打ちひしがれたい気分だもの。
人って顔じゃないのよね。そんな事、知ってるわ。でもね、アタシは一目惚れが好きなの。あら、要注意。コメの話じゃないわよ。
頭じゃ分かっているのに…。それでもまた、同じ事を繰り返すの。

同じ事を繰り返す人生もまた、美しい人生でしょ。
恋愛の仕方だけは、いつまで経っても「現状維持」。
報われないのも分かる気がしてきたわ。

そんな時期もあったわね。

それでよ、アタシ。
さっきまた、お菓子を取りに言ったら、店員さんに言われちゃったわ。
「すいません、お一人様、1回でお願いします。すいません…」って。

「あなたが謝る事じゃないでしょ。私が知ってて何度も食べてるんだから」
どこまでも偉そうでしょ。悪いのに、偉そうなの。偉いんじゃないの、偉そうなの。
「ねえ、何で分かったの?」
素朴な疑問をぶつけたところ、店員さんは苦笑しながら答えてくれたわ。
「実は、今の時間、当店をご利用されているのは、お客様お一人なんですが、いくらお菓子を補充しても…」
それ以上は、言わなくていいわ。お察ししたわよ、アンタの心中。
それは、アタシが素直に謝らないといけないわね。
「ごめんなさい。じゃあ、ラストにもう1回だけね」

血管がハチ切れそうな勢いで右手を広げて掴んだわ。
店員が、あまりにもジッと見つめるから、ちょっとだけ力を緩めて、少しだけお菓子を籠に戻したの。

「このくらいなら、いい?」
苦笑いをした店員が、仕方がなさそうに頷いたわ。

接客って難しいでしょ、店員さん。
仕事って、たやすいものじゃなくってよ。

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